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Posted by - 2024.05.08,Wed
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Posted by 真田隊 - 2008.09.11,Thu
あじさんから二ヶ月だってさ、笑うしかない!この調子で比例してったらどうする…!ブルブル
本気で危惧している暴走列車ヨルですこんばんわ
サシコはSFなんだよ!というのを主張する話というのが今回のテーマですがぶっちゃけナデシコの設定を見つけて燃え滾っただけです(うわあ)

……ところであじさん、佐助の烏の名前決まってないよどうしよう!


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組織内にて「烏」と通称される型の佐助の愛機は飛行性能に優れているが、他の戦闘機と違って陸上での移動能力には乏しかった。主なポジションがオペレーターであることからもわかるように、仲間内に誤解されがちだがそもそも彼は攻撃型戦闘機乗りではないのだ。あくまでサポーター、攻撃よりも武装防衛型の立ち位置なのである。
そのかわり柔軟な機動力とスピード、高い水準を誇る燃費によるスタミナが彼の武器であり、「犬」と呼ばれる攻撃偏重型の戦闘機の輸送は烏の専売特許であるとも言える。機体の底部のアンカーパーツで犬を吊り下げる形で輸送する烏独特のスタイルは、犬を運ぶために特化したパーツ進化の終着点だ。

全長約6m、黒塗りで森林迷彩のラインがあしらわれた機体が宇宙空間における佐助の手足である。
取り付けられた両翼の重力波ユニットによって高いスピード・機動力を実現し、爆発力で突っ走る幸村を追尾しなければならないために本来指揮官機に搭載されるべき強化センサーが積まれている。他所の警察組織で若手が使う機体はEOS(イージー・オペレーション・システム)が導入されて操縦者にそれほどまでに高いテクニックが要求されることは少なくなってきているのだが、佐助は頑固にIFSと呼ばれる旧システムを愛用していた。―――EOSは、搭載したAIによって常時一程度の自動操縦とマニュアル操縦とを併用するシステムなのだ。
精鋭揃いと言えば聞こえは良いが、とにかく常識はずれの面子ばかりが揃った武田警察であらかじめ組み込まれたプログラム通りに動く自動操縦など併用したら逆に足を引っ張るだけである。確かにEOSのAIは学習機能が高度に発達しているが育てるには時間も掛かる、それだったら例え旧式でもある程度こちらでマニュアル時の動きをオートにも反映できるシステムのほうが幾らかましだ、というのが佐助を始めとしたIFS愛用者の言い分だった。





「―――だからといって、EOSをそうも拒む理由にはならぬと思うのだが」

甲斐警察の所有する戦艦、自室。おもいーがーしゅんをかけーぬーけてー、と先日の星間ラジオで放送されていたオールドアース時代の音楽をうろ覚えに口ずさみながらコンソールを叩いていた佐助は、隣の椅子の上に体育座りして飴を舐める幸村の零した一言に一度歌を止める。
「……。なにが?」
「お前の烏だ。システム立ち上げはEOS搭載機の方が早いという話ではないか、オート併用が気に食わぬならそこにだけロックを入れておけば良いのではないのか?」

周囲に展開されたウィンドウを眺めながらの相方の言葉に佐助は思わず眉を顰める。
ウィンドウ、これはコンピュータなどの作業モニタを空中に展開したものの総称で、任意の場所に出現させることが出来るスクリーンのようなものだった。人間が宇宙に足を踏み出したばかりの時代には人のコンピューター作業はブラウン管や液晶モニターなどの機械の画面を介して行うのみであったらしいが、特にこの分野での技術革新は目覚しく、現在では小型の投影機さえあれば複数のウィンドウを空中に映し出すことが可能になっているのだ。この技術が確立されてからは作業能率が劇的に飛躍し、それに伴い戦闘機の操作系統も旧時代のそれとは大きく変化している。―――だがパイロットの求められる本質は、いつの時代も決して変わらない。

「絶対やだよ」

短く答えて乱暴にコンソールを叩き、幾つかの画面を幸村の前に表示させる。グラフや表がびっしりと書きこまれたウィンドウを目の前に浮かび上がらせてやると、驚いたようにぱちぱちとまたたきながら幸村は椅子を後ろに引いた。別にウィンドウは光ホログラムのようなものだから実体を持たず、それゆえに触れても何の影響もないのだが。
―――表示されたのは、佐助の管理する家計簿だ。
もっとも、ただの家計簿ではない。コロニー「躑躅ヶ崎」が所有し彼らが普段愛機と共に乗艦する戦闘母艦である、鶴翼級戦艦「二十四将」の収支表だった。

「大体ねえ―――ご覧の通りギリギリ黒字の低空飛行から抜け出せないうちの艦で、どうやって新しいシステム導入する金出すっての?」

疑問調ではあるが強い口調で一刀両断してやれば、う、とこどもが呻く。
捕り物をする度に残月のどこかしらを破損しているのは幸村だ。「真田隊」と呼ばれる整備班という名の幸村様ファンクラブがよってたかってメンテナンス・カスタマイズをしたがり、その様子は躑躅ヶ崎に所属するあらゆる艦に知れ渡ってしまっていた。己の機体のみならず犯人の機体まで破壊することで無力化することが多い彼の仕事ぶりは『武田の若虎』、『紅蓮の破壊神』、『赤きソードブレイカー』として他の警察組織でも有名である。ちなみに赤き彗星という異名も一時期流布したが、主に版権元的な大人の事情で今は使用されていない。
ともあれ、幸村と佐助を筆頭に、戦艦「二十四将」が稼ぎ出す賞金総額は甲斐警察でも指折りだったが、同時に支出総額も指折りだった。稼いだ賞金は流れるように右から左へ、各惑星政府の支払い窓口から修繕費などの必要経費となって消えていく。甲斐は豊かな惑星で、甲斐警察は有能な人材の集まる組織だが、この艦はいつだってジリ貧だった。特に鶴翼級戦艦、全長にして200mを超えるこの艦を動かすための燃料だけでも馬鹿にならない金額が飛んでいくのだ。これまでと全く違う原理のエンジンがどこぞの惑星工業特区で開発中らしいが、早く実用化されてほしいものだ。
そこんとこ自覚あるの、と毒づけば居心地悪そうに相手は椅子の上に膝を抱え、上目遣いでそろりとこちらを窺ってくる。
「す、・・・・・・すまぬ、佐助」
文字通り身を縮める様子を横目に見て、軽く彼は嘆息した。
反省は、するのだ。獲物を目の前にするとその瞬間佐助の小言が頭からすっ飛んでしまうだけで。
「―――まあ、旦那みたいなのがいるから俺もやりくり頑張ろうって思うけど、さ」
嘆息した流れで声から棘を抜き、左手でコンソールを叩きながら右手を小さくなった幸村の栗色の頭に乗せる。くしゃり、と柔らかな髪の中に指を差し込むようにしてそのまま撫でてやれば、子ども扱いをするな、といつもの抗議が飛んでくる。
最低限の身嗜みしか気にしない幸村の髪を切り揃えて整えるのも櫛を通して気を遣うのも、出会ってからこのかた、昔からいつだって自分の役割だった。それゆえか、背後の気配にどうしても敏感なこの子供が、佐助にはいとも簡単に無防備な背中を晒す。
「次の任務は……気を付ける」
「そうしてくんな。―――あんころ餅食べる?」
それまでの殊勝な態度はどこへやら、食べる!と勢い込んで答える相方の様子に少し笑い、操作盤の上を踊っていた左手を休め表示させていたウィンドウを全て霧散させて立ち上がる。
「そんじゃー、ちょっくら厨房に取りに行ってきますかねえ」
作業に邪魔な前髪を上げていたヘアピンを抜き取りながら、佐助はすっかり凝り固まってしまった背筋を伸ばした。
「まさかとは思うが事故米の心配はなかろうな」
笑い混じりに言われ、冗談、と笑う。先の星間ニュースで放送された、どこぞの惑星の主要輸出作物である地球米の転売事件のことを言っているのだろう―――否定されることを既に知っている、幸村にしては珍しいからかう時の口調だった。
「旦那は料理できないくせに舌だけは肥えてるんだから。あんたに出所知れない米が出せますかっての。今日のは奥州連合の伊達の旦那から直輸入よ?」
「おお、政宗殿のところか!」
奥州、と名を取る小惑星群は数年前まで紛争を繰り返していたが、当代になって伊達政宗のもとに統一され現在は奥州連合を名乗っている。恒星からいくらか距離があるために冬が厳しい星だが、よい「馬」の生産地であるとして辺境にも関わらず有名だった。見るべき産業は戦闘機「馬」の技術と、それから「だてこまち」「めごひめ」等ブランド化しつつある地球米である。
ただしこの奥州連合、領主の気質ゆえかはたまたもとからその素質があったのか、非常にガラが悪い。
盗んだ戦闘機で走り出すぜェェェと宇宙を大漁旗掲げて走り回るわ、フェイバリットな断崖絶壁を見かけると馬で飛び降りるわ、893なのか暴走族なのかわからないことでも名高いのだ。
佐助・幸村と奥州の筆頭とは顔見知りで、特に幸村とは顔を合わせるとすぐに一騎打ちを始める仲でもある。止めに入る方が吹っ飛ばされたり燃やされたり感電したりするので、最近は二人が出会うとそそくさと周囲は退避するくらいだった。

「佐助、茶も所望するぞ!」
「はーいはい、言われなくてもわかってますってェ」



******************************



―――EOSの話題をうまく逸らすことに成功したことに内心安堵しつつ、自室を出た佐助はぐしゃぐしゃと彼独特の色をした髪を崩した。
厨房へと足を向けながら、ドックのある方角へちらりと視線を走らせる―――もちろん、居住区からドックまでが見晴るかせるわけもない。視界に入るのは灰色の無愛想で無機質な壁ばかり、けれども佐助は脳裏に今はドックに格納されているはずの己の手足を精密に思い描くことが出来た。
烏と呼ばれるに相応しい鳥類を思い起こさせる鋭利なフォルム、漆黒の塗装、自分専用にカスタマイズしたコクピット、何年もかけて育て上げてきたAI。佐助自身の体内に注入されているナノマシンによって彼と機体は直接リンクが可能になっており、つまりこれがIFSと呼ばれる操縦システムであった。
いくら立ち上げが早くなって、基本操作をAIが代行してくれると言っても、
(EOSに切り替えるなんて冗談じゃない)
幸村の残月がどんなに損壊してもメモリ部分だけは壊れないように、佐助の烏とてもまた、かたくプロテクトされたメモリを持っている。もとよりIFS使いの佐助と直接リンクをするのだから、AIの思考パターンも佐助をトレースしている形に近かった。……視点も、また。
「……ほんと、冗談じゃねえよなあ、」
IFSからEOSへとシステムを入れ替えると、そもそも根本から構造の違う以上、AIを一度初期化することが求められる。
事前にこれまでのメモリのバックアップを取っておいて再び入れることは可能だが、それは一度抜かれた時点でただの『記録』であって既に『記憶』にはなり得ない。

これまでの出動、ダイレクトリンクした状態で佐助がどんなことを考えていたのか―――ナノマシンを介して、烏は全て知っているのに。

……とりあえず、EOSの話は終わらせることはできたか。
ふうと吹くように息を吐いて、上に大きく伸びをした佐助は気分を切り替えるようにドックの方角へ向けていた視線を振り切った。

「さあて、まずは旦那のおやつを確保、っと」



思考に耽る暇は今はない。欠食児童に糖分を―――自分のやることは、決まっているのだ。



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