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Posted by - 2024.05.08,Wed
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Posted by 真田隊 - 2008.05.25,Sun

基本はノリだけで突っ走る遅筆人こと味付けです。
通称真田宇宙です。私のターンでSFは期待しない方が吉です(おま)
ヨルさんも引っ張り込んだ癖に遅参の段御免なれにも程が…本当にすみません。
楽しんで頂けたら幸いです。


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あなたはUFOを信じますか?

 この場合、未確認飛行物体ではなくIAC(確認済エイリアンクラフト)と呼ぶべきなのかもしれない。
乗ってるし、宇宙人。
 空中地上問わず繰り広げられているカーチェイス…あれを車と言っていいのか、遠い目になっている佐助に判断は難しいが、連続殺人の容疑者も刑事も素晴らしい宇宙規定をぶっちぎった移動速度だ。そりゃあホシさんは捕まるわけにいかないから必死だろう。だが佐助には、少しでもスピードを緩めたら死ぬ。絶対に死ぬ!と恐怖に顔を歪めるホシの姿しか連想出来ないでいた。曲がりなりにも星外逃亡をやらかすような根性だけはある奴だ。それがこの有り様だった。
「悪いね。旦那が担当しちゃった時点で運が悪かったんだよ…」
 聞こえるはずもないが、嘆息を混ぜて呟く。円盤型のシップとバイクらしき物体の距離はそれほどまでに肉薄していた。逮捕されれば裁判の結果を判ずるなく死刑と言われるような凶悪犯でさえ、この追いかけっこには逃げ惑うしかないらしい。
「でも――真田幸村はこんなもんじゃねーぜ」
 ニッと口端を楽しげにあげて前方を見ると、燃料不足で僅かにシップが減速していた。トップスピードで走っていた両者は衝突、炎上するかと思われたが、黒塗りに赤の炎模様があしらわれたバイクが急ブレーキを踏んで、そのまま車体が空中で半回転する。ばこんとかいう機体前面部が破壊される音がして、シップとバイクは止まった。陸地であったからよかったものの、空中でやれば重力調整機能がイカレて地面に叩きつけられていただろう。今回はまだ(佐助の一般的常識だと信じたい範囲では)穏やかな制止方法だ。
 途端、佐助のスクリーンにバイクの主が写される。
『ヒトマルサンニ、指名手配No.E-3228確保。このまま連行体勢に移行願いたい』
「了解。…あー、また派手にやらかしたね。俺その人の機体も回収しないといけないんだけど」
『………無理か?』
 不安そうなスクリーン越しの顔と声色は、先程まで命知らずな運転をしていた人物と同じだとは思えない。やれやれと情報操作のコマンドを下し、端末を操りながら答える。
「希望だからブラックボックスだけ抜き取って爆破でもいいけど…旦那」
『何だ』
「その様子じゃそちらさん失神してるようだけど、手錠は俺が掛けるから中には入らな――」
 寄越されたデータファイルには、犯人は収集癖があったとされる。物が物だけに幸村には見せたくない。
なかったのだが、

「は、はれんちなァアア!」

遅かった。

「ああ、だから俺も一緒に来たってのに…」
 コックピットのリフトを飛び降りて地上に降り立った佐助は耳にキーンとくる大声で、予想が確信に変わってしまったのを知った。女性の下着を収集していたようだとあったから、機体内にもあるのではないかと思ったのだ。斬新なオブジェとなったバイクとシップの合体物に近づいて、半泣きで顔が真っ赤になりながらもしっかり手錠をかけている幸村をヒョイと覗きこむ。
 職務を忘れないあたり真面目なのだが、ホシの顔に打撲傷が出来ていて佐助はそっと目を逸らした。裁判所に渡すまでは永眠して欲しくない。
「だから言ったでしょ。それも胸くそ悪いけど証拠品」
「…っ許せぬ!」
「二発目は死ぬって!さっさと引き渡して本部に帰ろうよ。俺様もーくたくた」
 ドンパチやらかした星は文明が発展途上の星である。突然宇宙人が現れて争っていった事実は出来るだけ隠したい。星間干渉は戦の引き金になりやすいのだ。星の外に世界がある事も知らないような辺境の惑星。だからこそ犯人も逃げ込んだのかもしれないが、下手に着陸許可を申請して待つよりも手っ取り早い。
 隠して証拠隠滅はオペレーターの佐助には訳もない。何せ職場は癖のありすぎる者揃いだし、上司は猪突猛進の暴走癖がある。そんな環境でフォローしまくっていれば腕も効率も嫌でも上がる。悲しい事実でもあった。表向き戦国時代は終わりを見せたとはいえ、勢力拡大を目論む者は多い。小競り合いなら日常茶飯事だ。まだまだ安定しているとは言いがたい。
 佐助は幸村達をオートとマニュアルに切り替えながら追尾しつつ、隠ぺい工作・宇宙裁判所への受け入れ要請等を行っていた。幸村はいつも真剣に取り組むが、彼が本気で追っていたらオートモードには出来ず、マニュアルで追いかけなければ佐助でもあっという間に離されてしまう。紅蓮の鬼と恐れられる幸村には、自然とランクの高い人物を受持つ事が多い。佐助はこの暴走しやすい上司の部下でなだめ役でもあり、サポート役でもあった。幸村が動なら佐助は静だ。いわゆる女房役である。女房よりもおかんと呼ばれる事実には全力で見ない振りをしている。
 冗談でなく幸村は基地から大型艦、いや星一個吹っ飛ばす力を持っている貴重な存在だ。そして宇宙警察こと武田警察の刑事だった。
警察官といえばかつての母星、地球では街の安全を守るお巡りさんからカツ丼と電気スタンドを愛す刑事、護衛のプロフェッショナルSPなど様々だったようだが、今は意味合いが違う。

 ある星から宇宙に逃亡しちゃった犯罪者がいました。捜して捕まえようにも広い宇宙です。無限な広がりを見せる真っ暗闇な世界ですが、協定やら規制やら、もうがんじがらめです。他の星にとってもエエ迷惑です。そこで宇宙連合加盟国は緊急会議を開き、無法地帯に逃げ込んだ犯罪者に星は懸賞金を懸け、それを捕まえる組織と裁く組織を作ることにしました。捕まえる組織はオールドアースでの「警察」がこれに似ていたため、そう呼ばれるようになったのです。
――『宇宙歴史と成り立ち(第23章・組織の始まり)』

 つまり、佐助や幸村が所属する警察はハンターなのであった。似ていたって…似てる?と地球のアーカイブスを調べた時に疑問視した若い時期もあったが、宇宙の平和を守るのには違いない。そう思わないとやっていられない。
「今日は葛きりだよ」
「まことか!?」
「俺様特製の黒蜜ー」
 喜色を表して喜ぶ幸村に佐助は薄っすらと目を細めた。ぐったりしているホシを護送用の部屋に押し込めて、敵船の解体作業を行っている幸村に目を移す。細切れになっているのは百歩譲っていいとして、破片がびしばし車体に当たっているように見えるのは錯覚だろうか。
幸村の、バイクに。
「………」
 耐久力と防御力の高さは同僚どもが寄ってたかってメンテナンスするため、最高度を誇っているが、先ほどの衝撃映像のせいか幸村は力の加減がすごいことになっているらしい。何がどうとは言えないが、すごい。
今回は大破させることなく終わりそうだったのに、またしても修理行きになりそうなバイクは沈黙を守るだけだった。
「旦那、もっと離して置いときなよ…」
「……いや、だがそこに置いておけと」
「あのわんこが?」
「ああ。下手に無傷で帰ると、変な機能をつけられるらしい」

佐助は沈黙で返すことにした。

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