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Posted by 真田隊 - 2008.07.07,Mon
ヨルさんから一ヵ月経ってるだなんてウソだろ…小十郎…な気持ちです。
いつでも斜め前、こんばんは味付けです。
通称ですが「真田宇宙」は長いので、もっぱら「サシコ」で通ってるこのブログ。
もっぱらっていうか企画当初からサシコだったんですが、
私がミスやらかしてそのまま、という不名誉なことになってます。
お好きに呼んで頂ければ、と思いますが書くの遅くなっちゃいました。すみません。
この調子だと毎回すみませんって言ってるに5000真田主従

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 いくら巨大コロニー、躑躅ヶ崎が快適で人の住める環境であっても、分厚い透過壁の向こうは星間塵の舞う宇宙空間だ。ふと立ち止まって、冷たい壁に手を当ててみる。星の源になる岩石や鉄屑は無骨な姿のまま、幸村の視界から消えていった。

「ああいうの見てるとさ、青い空って貴重だと思うよ。慣れたけどね」

 オールドアースがあるのは太陽系だと言う。いつの日か世間話に話していた、部下の髪はその太陽の色に似ている。もしくは星が生まれる際の色に。きれいで好きだと、そう伝えると、日頃饒舌な彼が黙り込んでしまうのが不思議だ。
(佐助のあれは、昔から変わらぬな)
 そんな幸村にとって変わらないものは、もう一つ。
 ひんやりとする壁面から手を放し、迷わず向かえる数少ない場所にそれはある。自動扉の空気が抜ける音の先、修理室の中央部に鎮座している愛車を見て、ゆっくりと笑った。
「風邪は治ったか、残月」

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 武田警察のみならず、多くの主要各国で使われている小型戦闘機を総称し、隠語で「馬」と言う。おかげで「丸!馬を引けぃ!」「了解です!信長さまー!」等という、オールドアースを飛び出し進化を極めたこの時代でさえ、何百年も昔の光景が再現されている次第である。モビルスーツに手を出すと収拾がつかなくなるので、そこは見逃してもらいたい。ただ第五銀河系内惑星、三河にてガンダムの存在が90%確認されているのは確かである。100%でないのは、大人の事情です。
 代表的かつ一般的なのは「馬」であるが、やはり特殊なものもあり、佐助の扱う「烏」や幸村の「犬」もその一つだった。

「父上。父上は馬にとうじょうされぬのですか?」
「何とな、幸村。さてはお館様方の騎馬隊が威容に、心動かされたか?」
「幸村は犬もいさましく、誇りと思うております。…されど、遠方におもむくさい、犬は烏の力無くしては敵に牙を向けられませぬ」
 攻撃に演算能力の重きを置いた犬は、瞬発・小回りによるスピード・破壊力こそ髄を許さぬものの、持久力に乏しいデメリットがある。狩りをする肉食獣が一瞬に力を溜めて放つように、スタミナ切れの激しい機体なのだ。鳥とて隠密・撹乱に優れ、持久力と移動速度は目を見張るものだが、斥候を得意とするため攻撃よりも守りに重点が置かれる。総合バランスの良い馬が重用される理由はそこにある。敵を追っかけていたら早々に燃料切れで戦線離脱など、笑えるものではない。
「ふ、はは…幸村よ、それは重畳というものよ。馬には馬の役目、犬には犬の役目があるもの。地にて犬が駆け回れば、烏は空にて飛び回る。いかな宇宙であろうと、天地を定め制すれば、即ち敵はなし。
己と戦うのみとなる」
「おのれと、にございますか…?」
「おうとも。おぬしはまだ相棒がおらぬ故、解らぬかもよな」
「幸村は、犬も鳥も心うばわれる美しき機体と思うております。馬もさにあらず、なれど父上と又五郎どのが並び立つ様は、言葉に表せませぬ!」

 熱がこもりだしたのか、ぐっと勢いこんで瞳を輝かせる息子に、父上と呼ばれた昌幸は嬉しそうに破顔した。
親バカなのである。いや、息子がお父さんかっこいい!と目をキラキラさせて見上げてくれて、喜ばない父親はいない。だが昌幸はやはり幸村に対し親バカだったので、今夜は鳥使いでパートナーの壺谷又五郎を相手に、散々この件を聞かせようと思った。あやつも気に入ろう。秘蔵の酒を出してきても良いわな、と算段をつけて、父親の顔から人の上に立つ人間の顔になった。幸村はそれを見て、ピシャリと背筋を正す。
 先年まで続いていた、あらゆる銀河を巻き込んだ大戦は、ようやく終わりを見せつつある。宇宙に来ても何十年か、一世紀に一度は大きな乱が起きるものらしい。侵攻する側、防衛する側の図式は変わらない。
日頃荒っぽい職業に就いている昌幸だが、それも有事に備えてではないかと思っている。資源に事欠く環境で、第一に優先すべきは母星である。警察官が軍兵に変わるのはあっという間だ。

「犬は生涯一人にしか仕えぬ」
「はい」
「あれは誇り高く、また獰猛よ。手懐ければ無二の手足となろうが、出来ねば喰い殺されると知れ」
「…はい」
「それとな、我が身に何ぞがあれば、残月はおぬしの物とせい。ま、残っておったらな」
「は……父上ッ!?」
 残月は昌幸の犬だ。主君を見つけた犬は、他の干渉を受け付けないし二君を仰ぐ事はない。黒虎毛・赤虎毛・中虎毛とある犬の中でも、残月は気難しいと名高い黒虎毛だった。只でさえ乗りこなすのが難しい機体であるのに、一人のマスターしか認めないそれを、『何か』があれば幸村に渡すと言うのだ。二重の意味で信じられなかった。確かに残月は欲しいと思わせる戦闘機ではあったが、だとしても。
「無礼は承知なれど、そのような」
「認めねば残月自身がさっさと自壊しようて。それに、父は馬に乗るのも得意でな」
 にんまりと悪戯っぽく笑った昌幸は、又五郎や幸村の兄、信幸が会していたならば揃って「教育に悪い」と口を揃えていたものだが、幸か不幸か昌幸と幸村しかいなかった。それに昌幸が馬に乗れるのも確かであったので、幸村は頷くしか出来なかったのである。

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 幸村の声に応えたように、ほのかにヘッドライト部の明滅を繰り返す残月は、主を失っても自壊しなかった。
だがバグの嵐で、デバッグするよりも破壊する方が早い有様でもあった。

「旦那…フォーマットするかスクラップか、決めた方がいい」
「なあ、佐助」
「もうどんなワクチンがあったって間に合わない。手遅れだ」
「人は立ち直れると思うか」
「っ……立ち直れない人も、いるよ」
「残月は真田の甲斐虎毛犬だ。そして真田とは」


「総じて諦めが悪くてな」


 証拠に、残月はどれだけ大破しても、時にオペレーティングシステムにダメージを受けても、ある部分だけは壊れない。機械でのメモリに過ぎない、消去してしまうにはあまりにも簡単なそれを、人は記憶と言う。

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